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「就職」するってどういうこと?

【「法人としての会社」と契約すること】
若者にとって将来どのような会社に就職し、そこでどのように自己実現を図っていくのかが大きな関心事になっているようです。なかには、何かと拘束の多い会社勤めではなく、将来起業家を目指すという人もいるかもしれません。いずれの道を選ぼうとも、会社という組織の正体、そこに就職するという意味を知ることが重要です。

【「就職」とは会社との契約です】
多くの若者は長く厳しい就職活動を経て、4月になると晴れて希望した会社に就職していきます。社員になるということは会社とどのような関係になるのでしょうか。
会社に就職するということは、会社と契約を結ぶということです。これは正社員だけではなく、パートや派遣、アルバイトなどでも同様です。会社と就業員との間で、「会社の規則を守ってこの時間働きます。会社はこうした労働に対して報酬を支払います」といった契約を結ぶことです。会社に就職するときに誓約書を書くのはこのためです。派遣やアルバイトなどでも、「時間当たりいくら支払います」という契約書が必要です。この契約ですが、いったい誰と契約したのでしょうか。社長ですか? 部長ですか? 実は会社という「法人」と契約を結んだのです。

【法人登記で会社は法律上の「人」に】
法人とは、会社が土地や財産を所有できるように「法律上、人と同じように扱う」ということです。会社の設立を法務局に登記することで、会社は法律上人と同じ扱いとなり、それを社会に認めてもらったことになります。そこで初めて会社は土地を持ち、財産を持つことができるようになります。会社所有の土地や財産などは社長のものではなく、もし社長が亡くなっても法人の持ち物である限り、社長の遺族に相続されることはありません。
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人のことです。このため、個人が権利義務の主体となるため、個人名義で財産を保有できる反面、事業活動で生じた債務は個人事業主が負担しなければなりません。
社員として就職するということは、一定の条件の下で法人としての会社のために働くという契約を交わし、会社の利益追求のために働くことです。契約を結んでいる限り、違反した場合には退職金などが貰えない「懲戒解雇」やワンランク下の「諭旨解雇」などの処分を受けることは当然です。

【会社の利益は経済の好循環を促す】
会社の目的を一口で言うなら「お金を儲けるため」ということになります。
会社という組織は、一人ではできない仕事を何人かで行うことでより大きな利益をめざします。順調に利益が確保できるようになると、会社は事業の拡大を図るために積極的に設備投資などに力を注ぎます。この結果、雇用が促進され、失業者が減少していきます。当然、社員の給料も上昇し、消費は大幅に拡大していきます。また企業が生み出す新商品を多くの人が買い求めることで、世の中に出回るお金が増え、国に多くの税金を収めることができます。このように経済の好循環は、企業活動の活況によってもたらされるといっても過言ではありません。
企業活動が低迷すると、経済活動を支えてきた循環がストップしてしまいます。バブル期以降の日本経済は、まさにこの悪循環に陥ってしまっているのです。現在、春闘は終盤戦を迎えていますが、経済界と労働界がこぞって「経済も賃金も物価もバランスよく、安定的に上昇する社会へ」と強調しているのは、経済の悪循環を断ち切りたいとの願いから出されたメッセージといえます。

【給料はどのようにして決まる】
日常的に給料や給与という言葉が使われますが、法的な意味合いや会計上の扱いに重要な違いがあることを知っていますか。給料は労働の対価として受け取る金銭で、時給や日給、週給などの短期間労働を対象とした報酬のことです。一方、給与は月給や年俸など長期的な労働契約に基づいて定期的に支払われる報酬で、役職手当や時間外手当、賞与なども含まれます。契約に基づいて保証される固定的な報酬を基本給といい、基本給は健康保険や厚生年金保険などの保険料の算出基準となるため、労働者や雇用主にとって大切な数字となっています。
さて、会社が利益を上げたら給料は自然に上がっていくのでしょうか。一般的に給料は年齢、在籍年数、ポジション、成績などの組み合わせで決められます。賃上げには、大きく定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)の2種類があります。定昇は、年齢や在籍年数に応じて基本給が上がる仕組みです。もちろん管理職などに昇格すると昇給します。一方ベアは基本給の水準そのものを一斉に引き上げて、賃金体系の底上げをめざすものです。

【変化する日本の会社】
働くことで、その対価として給料を受け取ることは当然です。日本の会社の特長は、給料とともに「扶養家族手当」「住宅手当」などの福利厚生制度が整えられていることです。これは会社が一つの家族のように成長を遂げたいという日本的発想から生まれたものです。しかし、最近では副業や時短勤務、大幅な育休を認める会社も増え、コロナ禍以降は在宅勤務が増えるなど、会社の制度も従業員の働き方も大きく変化しています。将来の就職を考えるとき、従来の会社のイメージに捉われることなく、変化する労働環境を頭に入れて自分に相応しい会社にチャレンジしてください。

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