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クラウドファンディング(CF)とは何か

【その仕組みとメリット・デメリット】
2024年1月1日に発生した能登半島地震は、道路や電気・水道といったライフラインを分断し、各地に甚大な被害をもたらしました。復旧・復興への動きも少しずつ進み始めています。石川県は県全体として、2月21日現在、331億円を超える寄付金が寄せられていると発表しました。寄付金を集める手段として注目されている「クラウドファンディング」について説明します。

【不特定多数の人からネットを通じて資金を集める】
クラウドファンディング(CF)とは、英語のcrowd(群衆、大勢)とfunding(資金調達)とを組み合わせた造語で、不特定多数の人から主にインターネットを通じて資金を集める仕組みのことです。この仕組みは、インターネットの普及に伴い、2000年代のアメリカで誕生し、確立されたといわれています。
クラウドファンディングの仕組みは、おおむね次のようなものです。
出資を募る人(実行者)が「こんな便利な商品を考えました。資金がないのですが絶対実行したい」「今までになかった〇〇のサービスを作ります」「〇〇の自然環境の保全に協力してください」といった計画(プロジェクト)をネット上に掲載します。掲載された提案内容・必要資金額(目標額)などの情報を見て、その商品企画やサービスの実現を応援したいと思う人たち(支援者)が資金を提供する仕組みです。インターネットを利用して手軽に始められることから、支援者、実行者の双方で若年層を中心に広がりを見せています。

【大きく分けて、購入型・寄付型・金融型がある】
クラウドファンディングには、大きく3つの型(種類)があるとされています。
ひとつは「購入型」です。集まった資金により実行者が作る製品や商品、サービスを見返り(リターン)として受け取るスタイルです。たとえば「新商品を開発したい」というプロジェクトに対してなら、リターンは新商品そのものが送られてくるケースもありますが、「町一番のオムライス専門店を開きたい」というプロジェクトに対してなら、プレオープンへのご招待券など、リターンは必ずしも商品そのものに限りません。支援者にとっては、お金を出してモノやサービスを購入することとほぼ同じことになるので、購入型とよばれます。ネットショッピングに近い感覚で、クラウドファンディングの中で最も多く行われている一般的なスタイルです。
もうひとつは「寄付型」。たとえば「災害の被災地での復旧活動を支援したい」「紛争地で従事する医療関係者を応援したい」といったプロジェクトに寄付するスタイルです。自治体やNPO法人などが活動資金を得るためのプロジェクトが多く、内容も地域活性化、社会問題の解決など、社会貢献に関するものが多いのが特徴です。物品や金銭が得られることやリターンはなく、実行者からお礼のメールや手紙が送られてくるものが多いようです。
その他「金融型」というものもあります。購入型のリターンが物品や優待などといったものであるのに比べ、金融型は配当金や株などの金銭的リターンが得られる可能性があります。金融型を提案する実行者は、金融商品取引業者として国への登録が必要で、具体的には銀行や証券会社などが実行者となるケースが多いようです。内容は投資事業に極めて近く、今回はクラウドファンディングにはこういうスタイルもあるという紹介にとどめておきたいと思います。

【災害の復旧支援を寄付型CFで支援】
能登半島地震をはじめ、近年急増している自然災害の復旧支援などでは、以上の3つのうち、寄付型のクラウドファンディングで資金が集められることが増えてきました。
災害時の寄付は、配付されるルートの違い等から、便宜上大きく「義援金」と「活動支援金」に分けられます。義援金を集める方法として、30年以上前であったら街頭募金や募金箱が中心でした。近年は新聞社やテレビ局、そして日本赤十字社や赤い羽根募金で知られる共同募金会などが義援金を集め、被災地の都道府県に設置される義援金配分委員会によって被災した自治体へ配分され、被災者の方々に届けられます。一方、活動支援金は、被災地で支援活動を行うNPOなどへの寄付を通じて、間接的に被災者を支援するという流れとなっています。こうした活動支援金を集めるのに、クラウドファンディングの利用が増えているのです。
日本でクラウドファンディングが本格的にスタートしたのは、2011年だといわれています。この年、日本のクラウドファンディング活動を牽引するCAMPFIRE(キャンプファイヤー)、READYFOR(レディフォー)というクラウドファンディング運営会社が設立されましたが、設立の直後、東日本大震災が発生します。震災で大きな被害を受けた被災者や被災した自治体、被災地を支援するプロジェクトの実行者は、FacebookやTwitter(現X)といったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用して情報発信を行いました。クラウドファンディング運営会社は、プロジェクトの実行者と支援者をつなぐサイトを掲載し、活動内容とその経過を可視化しました。クレジット決済など寄付のオンライン化が進み、支援者にとって思ったときにすぐ寄付できる環境が整ったことで、寄付を身近なものとしてとらえられるようになりまた。1995年の阪神淡路大震災をきっかけに社会的に広く認知されたボランティアやNPO法人の活躍もあり、クラウドファンディングは東日本大震災を機に大きく発展することになりました。
『寄付白書2021』(日本ファンドレイジング協会)をみると、新規プロジェクトへの支援額でみるクラウドファンディングの国内市場規模は、2014年度に221億円であったものが2018年度では2045億円となり、5年間で約10倍の規模に成長しています。

【CFのメリットはスピード性と可視性】
諸外国と比べ、寄付・支援の文化が希薄とされてきた日本ですが、2020年からのコロナ禍ではクラウドファンディングによる寄付・支援の件数、額がともに伸び続けています。クラウドファンディングには、国など公的な支援に比べスピードが速く、実行者にとってはすぐに寄付金を受け取れるメリットがあり、支援者にとっても寄付の使い道が明確で、応援したい取組みにストレートに寄付できる納得感があることが伸びの理由だといいます。
ある社会学者は「これまで寄付というのは、寄付をした後、どういうふうに使われたかというのが見えにくかった。しかしクラウドファンディング運営会社がお金の流れとその結果を可視化した。こうしたことが、寄付という行為に懐疑的な人にも理解を広め、進展した理由だと思います」と語っています。コロナ禍での自粛期間、緊急事態宣言の発令下で大きな苦しみを経験してきた日本社会ですが、公的支援に加えて、クラウドファンディングの仕組みによって倒産を免れた老舗や中小企業、看護師を確保できた医療機関など、多くの方が恩恵を受けました。

【CFにもデメリットはある】
しかし、クラウドファンディングも明るい面ばかりではありません。残念ながら詐欺まがいのプロジェクトも存在します。国民生活に関する相談を行う独立行政法人国民生活センターには2020年、クラウドファンディングについてのトラブル相談や苦情が200件以上持ち込まれました。購入型クラウドファンディングの場合は「リターン商品が届かない」「事前の説明とは異なった商品が届く」などのケースもあり、寄付型の場合は「当初の趣旨と実際の活動が違う」などがその主な内容です。消費者庁の委託を受けて民間の調査会社が520人(20代~60代以上)からの回答で得た調査をもとに2020年秋に発表した報告によれば、購入型・寄付型クラウドファンディングの利用でトラブルや困りごとがあった割合は全体の26.3%にのぼり、20代では43.3% の人が「あった」と答えています。信頼性をどう担保するかが、クラウドファンディングの課題のひとつです。
上記のREADYFORでは、こうしたトラブルを防ぐため、企画を作る際のアドバイスやプロジェクトの審査を行っています。専門の担当者がついて企画者との打ち合わせを数回行い、最終的には弁護士も含めた審査チームが実現可能性や適法かどうかなど総合的な視点で審査しています。同社CEO(最高経営責任者)は、「トラブル解決には誠意を持って対応します。場合によっては返金にも応じます」と話しています。しかし、一般的にトラブルが発生した場合は、原則として利用者当事者(実行者と支援者)間で直接交渉することが利用規約等で定めている運営会社も多いので、クラウドファンディングを利用するとき慎重に判断すべきことはいうまでもありません。困った場合には、各自治体の消費生活センターに相談するのもひとつの方法です。

【CFを利用する際は慎重さも必要】
クラウドファンディングは支援者となるだけでなく、自らがプロジェクトを企画し、実行者になることもできます。たとえば「自分の〝推し〞アーティストのコンサートを開きたい!」というプロジェクトを立ち上げるのも可能です。実行者側からの一般的な流れとしては、
①クラウドファンディング運営会社を選び、審査を受ける
②プロジェクトページを作成する(運営会社がアドバイスをくれることも)
③目標額、掲載期間を定めてページ公開して集客する(資金を集める)
④掲載期間終了後、リターンを送付するということになります。
支援者から「頑張って!」「自分では決して達成できないような夢ですが、自分もその一員のような気持ちで参加させてもらっています」というメッセージが届いたりして、支援者の熱い思いなど、お金だけではないものを得られるメリットもあります。ただし当然デメリットもあります。上記のような手順をふめば必ず目標額が集まるとは限りませんし、たとえ目標額を集めて事業を進行したとしても途中で頓挫することもあるでしょう。そのようなときは支援者から見限られる可能性もありますし、場合によっては社会的な信用を失うことになりかねません。今までにないオリジナルな商品を思いついても、プロジェクトとして広く公開することでアイデアを第三者に盗用されるリスクも考えられます。
クラウドファンディングにはメリットとデメリットがあるということを十分に理解して利用しなくてなりません。

国立科学博物館HPより

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