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SDGs達成ランキング、日本は世界21位に後退

【ジェンダー平等など5目標に「深刻な課題」】
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年の国連サミットで全加盟国の全会一致で採択されました。SDGsとは、誰一人取り残されない持続可能でよりよい社会の実現をめざす世界共通の目標です。この目的を実現させるため、SDGsは17の目標と169のターゲットで構成され、2030年を目標の達成年限としています。今年は2030年までの折り返しの年になりますが、日本の達成ランキングは世界21位と過去最低となっています。

【SDGs(持続可能な開発目標)とは】
最近テレビや新聞、ネットニュースなどでよく見聞きするSDGs。学校の授業でも取り上げられ、知っている人も多いかと思います。しかし、SDGsの内容を詳しく覚えている人は少数だと思いますので少し振り返ってみましょう。
SDGsとは、世界が直面している環境問題、差別、貧困、人権問題などを2030年までに解決しようという計画です。このSDGsが国際的に注目されるきっかけになったのは、2017年にスイスで開催された「ダボス会議」です。世界各国の政財界や学術分野のリーダーが集まるダボス会議で、世界経済フォーラム(WEF)が「SDGsを達成することで、2030年までに少なくとも12兆ドルの経済価値と、3億8000万人の雇用が創出される」と発表したことです。日本でも総理大臣を本部長とする「SDGs推進本部」を設置し、毎年全省庁による具体的な施策を盛り込んだ「SDGsアクションプラン」を策定し、国内での推進と国際協力の両面でSDGsを推進しています。

【17の目標と169のターゲット】
SDGsの17の目標は、カラフルなアイコンで示され、既に多くの人が目にしていると思います。しかし、17の目標を詳しく覚えるのは難しいという人は、テーマごとに分類して理解しては如何でしょう。
上段の6つの目標を要約すると、貧困や飢餓の撲滅やジェンダー平等など「人間の生命や権利」がテーマになっています。中段の6目標には、雇用確保や経済成長、クリーンエネルギーの普及など好ましい「経済活動」が取り上げられ、3段目には気象変動、地球環境、平和と公正などの「地球規模の課題」が掲げられています。
これら17の目標を実現するため、169もの指標が定められています。しかし、SDGsは各国が自主的に取り組むもので強制力はありません。

【SDSNがSDGsの達成度を評価】
国連と連携する国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が6月21日、世界各国のSDGsの達成度を評価した「持続可能な開発報告書」の2023年版を発表しました。SDSNは2016年から国連や各研究機関などの統計資料をもとに各国のSDGsの取り組みを100点満点で点数化したSDGs達成度を公表しています。
2023年のランキング1位は3年連続でフィンランド、2位はスウェーデン、3位はデンマークで20位までを欧州の国々が占めています。日本は2016年の調査以来、毎年10位台を維持してきましたが、昨年の19位から21位と過去最低に順位を落としました。
また、報告書では国ごとに17の目標に対しての達成状況を、「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「深刻な課題がある」の4段階で評価しています。日本は「質の高い教育」と「産業と技術革新の基盤を作る」の2目標が昨年同様に達成済みになっています。しかし、「ジェンダー平等」「つくる責任、つかう責任」「気候変動に具体的対策」「海の豊かさ」「陸の豊かさ」の5目標は、「深刻な課題がある」と評価されました。残る10目標については「課題が残る」には「貧困をなくそう」など5目標、「重要な課題がある」には「飢餓をゼロに」など5目標が入っています。

【「深刻な課題がある」と評価された5目標】
「ジェンダー平等」では、深刻な課題があると指摘されました。日本では以前から女性の政治や経済分野などへの進出の遅れが指摘されてきました。典型的な例として国会議員の男女比率が上げられます。男女間の賃金格差も大きく、これらが低評価の要因になっています。「つくる責任、つかう責任」では、廃棄物の発生防止、削減、再生利用などの遅れが指摘されています。さらに、増え続けるプラスチックごみ、途上国へのごみの輸出も大きな問題です。
「気候変動」「海の豊かさ」「陸の豊かさ」は、何れも環境問題と直接的に関係しています。国や企業が積極的に活動していくためには地球環境、自然環境への配慮が欠かせません。一刻も早く対策をまとめ、実行に移して欲しいものです。

【SDGsをめぐる世界の動き】
今回のSDSNの報告書は、「SDGsは強い逆風にさらされている」という書き出しで始まり、2030年の達成年に向けた中間報告として、「すべての目標で達成の軌道から大きく外れ、貧しく非常に脆弱な国々が最も苦しんでいる」と危機感を表しています。2020年以降、一連のコロナ禍にあって世界経済は大打撃を受け、とりわけ途上国でのSDGs達成度は下がり続けました。報告書では「SDGsは私たちが望む未来の基本であることに変わりはない」と訴え、COP28などあらゆる国際会議などを通じて、資金援助、投資に必要性を強く呼びかけています。私たち個人でも、省エネやごみの再利用などできることがたくさんあります。暮らしの中から、SDGsの理念を理解することが大切だと思います。