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SNS時代の著作権

【発信する際に求められる個人の意識の向上】
小説や詩をはじめ、絵画や彫刻、音楽など、それぞれ自分の考えや気持ちを作品として表現したものを著作物といい、それらの作品を創作した人を著作者といいます。
近年、個人が誰でも著作物をインターネットで配信できる時代になりました。その一方で、違法に複製された海賊版も出まわるなど問題になっています。著作者に与えられる権利である「著作権」について調べてみました。

【著作者の死後70年まで保護される著作権】
著作物を分類し、わかりやすく例示すると表のようになります。マネではなく、自分で工夫してその人の思想や感情が創作的に表現されていれば、たとえ3歳の子どもの絵や小学生の作文も立派な著作物です。著作権は、こうした創作活動で作品を作り出した人に与えられる知的財産権のひとつです。年齢や上手下手は関係ありません。著作権は、特許庁に登録しなくても著作物を創作した時点で著作者に自動的に発生する権利です。
著作権は著作権法という法律によって、日本では原則として死後70年まで保護されます。著作者が亡くなった翌年の1月1日から起算されます。著作権の保護期間が消滅した作品は、社会全体が共有する文化的財産(パブリックドメイン)として、誰でも自由に利用することができます。

【著作権は文化の発展を支える】
私たちは毎日の暮らしの中で、音楽を聴いたり、ドラマやアニメを見たり、本や雑誌で小説や詩を読んで、楽しんだり癒されたり励まされたりします。このように著作物を利用し、豊かな生活をおくることができる代償として、私たちは配信される音楽や購入する本に対して代金を支払います。こうした仕組みの中で報酬を得た著作者がまた新しい著作物を創り出すことで、結果として文化が発展していくという大きな流れが生まれます。著作権は文化の担い手である著作者を保護する権利です。著作権で保護されている著作物を使用する場合には、原則として著作者に許可を取らなくてはなりません。
しかし、著作権法には一定の条件のもとでなら、著作者の許可をとらずに著作物を自由に利用できる場合も定めています。みなさんの暮らしや学校生活でよく出くわすと思われるケースをいくつか挙げてみます。

【許可なく著作物を利用できるケース】
①私的使用のための複製(コピー)
自分の好きな番組をもう一度自分や家族で見るために録画することはOKです。しかし、録画したDVD等を複数の友だちに貸すことは個人的利用という範囲にとどまらないと考えられ、NGです。
②図書館などでの複製(コピー)
図書館は、利用者から調査研究などの目的でコピーの希望があった場合は、図書館で所有している本や資料のコピーを許可してよいという規定があります。図書館のコピー機の周囲に、こんな掲示を見たことはありませんか。

・コピーできるのは図書館内の資料に限ります。
・資料の全ページのコピーはできません。
・コピーは1人1部に限ります。

これらはすべて著作権法に基づいた注意書きで、これらのルールを守る場合だけ、コピーが許可されます。
③学校などの教育機関での複製(コピー)
先生が教材を作る際や、生徒が授業で発表するための資料として著作物をコピーすることは許可されています。
④自分の著作物に他人の著作物を引用
たとえば自分のレポートや論文に、他の人の論文や小説の一部を持ってきて説明に用いること(引用)は認められています。ただし、引用する必然性があること、あくまでも自分の論文が中心(主)で、引用する個所はその一部(従)でなくてはならないという条件があります。引用した箇所は「 」でくくるなど自分の文章と引用した箇所とを明確に区別することや、引用した論文の題名・著作物名・引用した箇所のページ数などを示すことが必要です。
⑤著作物を使った「非営利」「無料」の上演・演奏等
発表・発売された戯曲等をもとにして文化祭で上演する場合などが該当します。

【インターネット上での著作権侵害】
インターネットの普及によって、一般ユーザーが著作物を拡散する機会が格段に増えたことで、著作権を取り巻く環境も大きく変わり、一般ユーザーも著作権を理解する必要が出てきました。インターネット上では、どのような行為が著作権侵害に該当するのでしょうか。それは著作物の拡布行為、つまり著作者の承諾なく著作物を「不特定多数の人々に広める行為」を指すと専門家は指摘します。
自分のブログやSNSなどに、他人が撮影した写真や無断で録画したライブの様子を掲載したり、有料のコンサートで許可をとらずに他人の楽曲を演奏することは著作権侵害となります。
他人の著作物を使う際は、著作権による保護期間など注意が必要です。また著作者を見つけるのが困難な場合もあります。そうした場合は、著作権の適切な保護等を目的として活動を行っている公益社団法人「著作権情報センター」に問い合わせることもひとつの方法です。同センターは、日本音楽著作権協会(JASRAC)・NHK・日本民間放送連盟など700を超える正会員・賛助会員で構成されており、相談体制も整えられています。

【SNSで著作権侵害にあたる場合】
著作権保護期間にある著作物を扱うとき、次のようなケースは著作権侵害にあたります。
1、ヒット曲の歌詞をブログに掲載する――
歌詞には著作権が発生します。歌詞を引用の手順を踏まず、許可なく掲載してはいけません。
2、他人が書いたTwitterなどの投稿をコピー&ペーストして、自分のものとして投稿する――
SNSの書き込みにも著作権は発生します。たとえば、みなさんの書き込みが許可申請や引用の手順も踏まれずに、丸ごとコピペして掲載されていたとしたら著作権侵害といえます。
3、録画した映画やテレビ番組、音楽をYouTubeなどにアップロード、あるいはマンガや小説などのアップロード――
不特定多数の人が見られるようなサイトに投稿することはNGです。
4、カラオケ動画をYouTubeなどにアップロードする――
YouTubeはじめInstagram、FacebookなどのSNSは、JASRAC等の著作権管理会社に対して「管理を任せている楽曲全ての使用を許可する」といった契約(包括契約)を結んでいるので、個人がギターやピアノなどでアーティストの楽曲を演奏している動画をそれらのSNSにアップロードすることは違法ではありません。しかし、カラオケ音源を使った歌唱は、カラオケ音源を作成し配信した会社への著作権侵害となります。
5、他人の写真を無断掲載する――
インターネット上には、個人が撮影した写真が数限りなくあります。許諾もしくは引用の手続きを踏まずに無断で公開することはできません。

【海外の著作権法が適用されるケースも】
国内で著作物を利用する場合は、すべて日本の著作権法に従いますが、外国の著作権法が適用されることもあります。たとえばアメリカの著作権法のひとつDCMA(デジタルミレニアム著作権法)は、デジタルコンテンツを保護するための権利や違法に対する罰則が規定されています。DCMAは米国の法律ですから、大前提として日本では適用されません。しかし、著作者から著作権侵害の通知があったとき、米国のプロバイダは該当するコンテンツを削除しなければならないとされており、たとえば米国企業であるGoogle、YouTube、Twitterなどへの投稿が著作権侵害とみなされた場合、投稿者の国籍を問わずDCMAの影響を受けることになります。
インターネット上の違法・有害情報についての相談窓口には、総務省が支援する「違法・有害情報相談センター」があります。
現行の著作権法は、明治時代に公布された旧著作権法を1970年に全面改正したものです。その後半世紀以上の間、著作権法は時代の変化とともに細かく改正されてきました。デジタル・ネットワーク社会に適応するため、今後も頻繁に改正が続けられていくと思われます。
誰もが気軽に情報を全世界に発信できるようになったデジタル時代だからこそ、SNS等で音楽や映像などの著作物を扱うときには「小さな意識のスイッチを入れる」といった、一人ひとりの意識を向上させていく必要があります。

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