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国立国会図書館、個人向けデジタル化資料送信サービス開始

【絶版書籍や論文がパソコンなどで閲覧可能に】
東京と京都にある国立国会図書館は、5月19日から「個人向けデジタル化資料送信サービス」を開始しました。これは昨年6月に著作権法の一部改正によって、国立国会図書館はデジタル化した資料のうち、絶版などで入手困難になった書籍や論文などの資料を、インターネットを経由して個人に送信できるようになったためです。法改正の背景には、急激に進むデジタル化やネットワーク化への対応、一連のコロナ禍で国立国会図書館や公共図書館などを訪問することなく利用できるデジタル化資料へのニーズが、研究者や学生の間で高まったことなどがあります。

【国立国会図書館には二つの源流が】
国立国会図書館には二つの源流があります。1872年(明治5年)に設立され、行政機関である文部省に属していた帝国図書館(創立時は書籍館)と、もう一つは1890年(明治23年)に開設された帝国議会の貴族院・衆議院の図書館です。これら二つの図書館のほとんどの蔵書は、現在の国立国会図書館に引き継がれています。
第二次大戦後、新しく国立図書館を整備する動きが起こり、衆参両議院議長は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に対し、図書館専門家の派遣を要請しました。1947年(昭和22年)にアメリカ図書館使節が来日し、アメリカ議会図書館の例に倣い次のような助言を行いました。すなわち、国立国会図書館は国会のための図書館であると同時に、国内図書の網羅的収集とその責任ある書誌記述を行い、広く国民の利用に供すること、館長は国務大臣級の人物を当てることでした。これらの助言によって国立国会図書館の基本構想がまとめられ、国立国会図書館法案成立の基礎となりました。

【国内出版物は国立国会図書館へ納本の義務】
国内の出版物は、1948年に成立した国立国会図書館法で、すべて国立国会図書館への納本が義務付けられました。これにより網羅的な資料収集の基礎が出来上がり、蔵書数は飛躍的に拡大していきました。
国立国会図書館は1948年6月、赤坂離宮(現迎賓館)を仮庁舎に開館しました。1961年に永田町現庁舎の第一期工事が竣工、支部上野図書館(旧帝国図書館)などの資料も統合し、205万冊の蔵書を擁する日本を代表する図書館として活躍を開始しました。そして開館20周年にあたる1968年、現庁舎である本館が完成し、さらに増え続ける蔵書に対応するために、1986年に隣接して新館を建設し、1,200万冊の資料が収納できるようになりました。
2002年10月には、関西文化学術研究都市内(京都府相楽郡精華町)に、国立国会図書館関西館が開館しました。また、5月に、わが国初の国立の児童書専門の国際子ども図書館が、支部上野図書館を改築して全面開館しました。

【個人向けデジタル化資料送信サービスとは】
5月19日からスタートした新しいサービスは、2021年6月の著作権法の一部改正によって可能になりました。これまで国立国会図書館はデジタル化した資料のうち、絶版などで入手が困難になった書籍や論文など約153万点を、公共図書館や大学の図書館のみにインターネット送信してきました。このデータ送信を直接利用者にも送信できるようになったのです。
法改正の背景には、デジタル化・ネットワーク化への対応とともに、新型コロナウイルスの影響で国立国会図書館や公共図書館、大学図書館などの休館が相次ぎ、閲覧すらできない時期があり、見直しを求める声が高まっていました。このため、入手困難な資料を個人のパソコンやタブレット端末などで何時でも何処でも閲覧できるように、著作権法の一部改正が急がれていたのです。

【登録方法と閲覧方式】
18歳以上であれば、事前に利用者登録をしておけば無料で個人向けデジタル化資料送信サービスを利用することができます。登録にはマイナンバーカードや運転免許証など、本人確認できる書類の提出が必要ですが、直接出向かなくても郵送やインターネットでの手続きも可能です。
登録が完了すれば、「国立国会図書館デジタルコレクション」というウェブサイトにアクセスすれば閲覧できます。利用できる資料は、国立国会図書館デジタルコレクションで提供している資料のうち、絶版などの理由で入手が困難と確認された資料です。具体的には「図書館送信資料」約153万点の範囲内となります。ただ、半世紀以上前の古い資料からデジタル化しているので、絶版になればすぐに閲覧できるわけではありません。また、漫画や商業雑誌は閲覧対象になっていません。

【進化する図書館を上手く利用しよう】
現在は閲覧のみのサービスとなっていますが、来年1月からは印刷もできるようになります。このように国立図書館の見直しが進み、個人のパソコンで絶版書籍や論文が何時でも何処でも閲覧できるようになりました。一般の図書館でも専門の知識を持つ司書が、利用者の調査・研究をサポートするリファレントサービスの充実が図られています。急速に進化する図書館を上手く利用し、専門的な研究や幅広い知識の習得などに利用してはいかがでしょう。

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